human and environment
3-2. 定義
- 環境汚染 -  松田 八束



エアロゾルは、粒子の形やその発生原因によって再分類することができる。エアロゾルに関する厳密な科学的分類はない。以下の定義は一般に用いられ、また大部分の科学的な記述にも使用しうる程度には正確なものである。

エアロゾル(aerosol)気体中に固体もしくは液体の粒子が分散しているもの。通常、エアロゾルは少なくとも数秒間程度は安定状態を保っているが、ときには1年もしくはそれ以上にわたって安定状態を保っている場合もある。エアロゾルという言葉には、粒子を分散させている気体(通常は空気である)をも含んでいる。粒子の大きさは0.001μmから100μm以上までの範囲である。

関連語:空中分散粒子系(aerodisperse system)

通俗的な呼称

粉塵(dust)
固形物がその化学的組成を変えず、形、大きさが変わって粒状になり空気中に分散したもので、粉砕、研磨、穿孔、爆発など、主として物理的破砕過程で生じる。球形、針状、薄片状など、形、大きさともに不均一でかつ大きさは1μm以上のものが多く、サブミクロンから目に見えるものまである。

フューム(fume)
固体が蒸発してのち凝縮して粒子となったもので、金属の加熱溶融、溶接、溶断、スパークなどの際に生じる。蒸気またはガス状の燃焼生成物が、凝縮して生成する固体粒子のエアロゾルも含む。このような粒子の生成過程では、一般に物理的作用に化学的作用が加わり、空気中では多くの場合酸化物となっており、球状か結晶状である。粒径は小さく1μm以下のものが多い。

(smoke)
燃焼の場合に生じるいわゆる“けむり”に類するもので、一般に有機物の不完全燃焼物、灰分、水分などを含む有色性の粒子である。一つ一つの粒子は球形に近いが、これらが凝集してフロック状をなすものが多い。通常、直径1μm以下の大きさである。

(smoke)
燃焼の場合に生じるいわゆる“けむり”に類するもので、一般に有機物の不完全燃焼物、灰分、水分などを含む有色性の粒子である。一つ一つの粒子は球形に近いが、これらが凝集してフロック状をなすものが多い。通常、直径1μm以下の大きさである。

ミスト(mist)
一般には微小な液体粒子を総称していう。液体が蒸発凝縮したもの、液面の破砕や噴霧などにより分散したものがすべて含まれ、形状は球形である。粒径は生成過程の差異によってかなり幅がある。サブミクロンから約20μmまでの広がりをもつ。

粗大粒子(coarse particle)
直径2μm以上の粒子

微小粒子(fine particle)
直径2μm以下の粒子


気象学の分野における大きさに着目した分類

エイトケン粒子(Aitoken particle: 0.001-0.1μm)
大粒子(large particle:0.1-1μm)
巨大粒子(giant particle:1-100μm)

参考文献:
駒林 誠、「気象の科学」NHKブックス196、日本放送協会、昭和50年11月1日第4刷



地表付近の気象、塵象における用語

(fog)
ごく小さな水滴が大気中に浮かんでいる現象で、水平視程が1km未満のもの。目に見えるミスト。

(mist)
霧と同様であるが、水平視程が1km以上のものをいう。

煙霧(haze)
ごく小さな乾いた粒子が大気中に浮かんでいる現象で、黒っぽい背影では青紫色がかり、明るい背影では黄褐色にみえる。同様な現象であっても汚染源が明らかな場合は煙とし、そうでないときを煙霧とすることがある。

スモッグ(smog)
smokeとfogからなる合成語である。その内容についての明確な定義はなく、煤煙で汚れた霧というくらいの意味である。「光化学反応による生成物であり、通常、水蒸気と結合している。」と定義される場合もある。粒子は、通常1-2μm以下である。

Los Angels型スモッグ
石油系燃料による煙霧と煙とから生じる大気汚染現象

London型スモッグ
石炭系燃料による煤煙と霧とから生じる大気汚染現象

クラウド(cloud)
はっきりした境界面を有する目に見えるエアロゾル。


我が国における大気汚染関係の用語

ばい煙
いおう酸化物、煤煙、その他の有害物質

粉塵
物の破砕、選別その他の機械的処理または堆積に伴い発生し、または飛散する物質でダストともいう。また気体中に浮遊しているものを浮遊粉塵という。

浮遊粒子状物質
大気中に浮遊する粒子状物質であって粒径が10μm以下のもの。

生物系エアロゾル粒子
花粉、胞子などが気体中に浮遊しているもの

一般に、上記の区別は必ずしも必要としないので、一般的な言葉であるエアロゾルを用いる。固体粒子はparticle、液体粒子はdropletと呼ばれる。粒子状物質(particulate matter)という言葉は、固体粒子、液体粒子のどちらでもあてはまる。1次エアロゾル(primary aerosol)は、大気中に直接放出された粒子を含有するものであるのに対し、2次エアロゾル(secondary aerosol)は気体成分の化学反応(気体−粒子変換)によって大気中で生成された粒子を含有するものである。

単分散(monodisperse)エアロゾルは、粒子がすべて同じ大きさのものである。これは試験用エアロゾルとして実験室でつくられる。多分散(polydisperse)エアロゾルは、ある範囲の粒径の粒子から成っており、きわめて広い粒径範囲を示すことが多い。その大きさを特性づけるには、統計的な計測が行われなければならない。
ここでは、標準状態を温度20℃、圧力760mmHgの状態と定義する。