human and environment
3-3. 粒子の粒径、形状、密度
- 環境汚染 - 松田 八束
![]() 図1.5(KLAUS WILLEKE:GENERATION OF AEROSOLS,Ann Arbor Science,1980) 粒子の粒径(particle size)は、エアロゾル挙動の特性を表すのに、最も重要である。エアロゾルの性状の全てが粒径に左右され、なかには非常に強く支配されるものもある。さらにほとんどのエアロゾルは、非常に広い範囲の粒径の粒子から成っている。最小粒径と最大粒径の幅が100倍に達するエアロゾルは決してまれではない。単にエアロゾルの性状が粒径に左右されるだけではなく、これらの性状を支配している自然法則自体も粒径によって異なってくる。このことは、微視的な立場に立ち、個々の粒子そのものの性状を把握する必要があることを示している。個々の粒子の性状が把握できたとすれば、エアロゾル全体の平均的な性状は、粒径分布全体にわたってそれを積分することによって得られる。エアロゾルの性状が、粒径によっていかに異なるかを認識することが、その性状を理解する基礎である。 粒径の“ものさし”(yardstick)は、マイクロメーター(μm)もしくは、それの古い表現法のミクロン(μ)である(1μm=10-6m=10-4cm=10-3mm)。粒径は半径で表わされる場合もあるが、ここでは粒子の直径とし、μm単位で表わす。記号d、または他の記号と混同するおそれのある場合は、記号dpを用いる。cgs単位系で計算する場合には、μmを10-4倍してcm単位に変える必要がある。 図1.5にエアロゾルの粒径範囲と各種の現象例を示す。大きく見て、1μmのところで2つに分けられる。これはサブミクロン領域の上限(μm以下)とミクロン領域の下限(1.0〜10μm)に相当している。図1.5は、108幅の粒径範囲を示しており、これは気体分子からゴルフボールまでの幅に相当している。図1.5の下半分に示したエアロゾルの粒径は、0.01〜100μmの範囲であり、ここで取り扱う粒径範囲もこの範囲である。 一般にダスト、研磨生成物、花粉はミクロン領域もしくはそれ以上であり、フュームや煙はサブミクロン領域もしくはそれ以下である。最小のエアロゾル粒子は、大きな気体分子とほとんど同程度の大きさであるため、気体分子の性質の多くを有している。最大の粒子は目に見える粒子であり、野球のボールや自動車に適合されるニュートン物理学によって記述されるような性質を持っている。普通の状態で見ることのできる小麦粉の最小粒子は50〜100μmである。最も細かい篩の開口部の大きさは約40μmである。可視光の波長は、サブミクロン領域の粒子の大きさ程度であり、0.5μm前後である。 液体のエアロゾル粒子は、ほとんど常に球形であるが、固体のエアロゾル粒子は図1.1〜1.4に示すような複雑な形をしているのが普通である。エアロゾルの特性に関する理論を展開する際には、粒子形状を球形であると仮定する必要が生ずることが多い。非球形粒子に対してその理論を適用する場合には、相当径(equivalent diameter)の形で補正係数が用いられる。相当径とは、不規則な形状の粒子が有するある特定の物理的性質と、全く同じ特性値を持つ球形粒子の直径のことである。どのような特性を取り上げても、形状の相違によってその特性値が2倍以上もの相違を生じることはまず無いので、概算的には形状を無視できることが多い。細長い繊維のような極端な形の粒子は、各方向について単純化を行うが非球形粒子として扱う。 ほかの重要な物理的性質としては、粒子の密度(particle density)がある。この密度は、粒子自体の単位体積あたりの質量を表したものであり、エアロゾルのものを表わしてはいない(エアロゾルの密度は、次節で述べるごとく濃度で表わされる)。液体粒子が破砕あるいは研磨によって生成した固体粒子の密度は、もとの材質と同じである。スモークやフュームの粒子は、見かけ上、その化学組成から推定されるものよりはるかに小さい密度を有している。これは、これらがぶどうの房に似た凝集構造を有しており、粒子間に大きな隙間が存在するためである。ここでは、特記のない限り、粒子は単位密度、つまり水の密度1.0g/cm3と同じ密度を有すると仮定している。 エアロゾル粒子の基本的性質
高橋 幹二著「改定基礎エアロゾル工学」 養賢堂(1982)
高橋 幹二著「改定基礎エアロゾル工学」 養賢堂(1982)
高橋 幹二著「改定基礎エアロゾル工学」 養賢堂(1982)
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